
![]() The Autobiography Miles Davis マイルス・デイビス自叙伝 |
『ニューヨーク中を探しまわって、やっとバードをみつけたんだ』 ある日、ハーレムの145丁目にある『ヒートウェイブ』というクラブのジャム・ セッションにバードが出るという新聞広告を見つけた。ホーク(コールマン・ ホーキンス)に「バードは来るだろうか?」と聞いてみたが、 「バード本人も、わかっちゃいないだろう」と言われた。 俺はその夜、やばい場所にある、やばいクラブの『ヒートウェイブ』に行った。 もしバードに会えたら、きっと俺を覚えていてくれて演奏させてくれるだろうと 思っていたから、トランペットを持っていった。バードはいなかった。 俺は座って、バードが入ってこないかとドアを睨みつけていた。ほとんど 一晩中だ。だが、バードは現れなかった。それで風にもでもあたろうかと外に 出て行った。クラブの外の通りの角でぼんやりしていたら、後ろから声がした。 「ヘイ、マイルス。俺を捜していたのかね。」 振り向くと、そこにバードがいた。チャーリー・パーカーが立っていた。俺は自分が 世界一幸せな男だと感じた。 探すのがどれだけ大変だったか話すと、彼は微笑んで「あっちこっち 動きまわるからね」と言った。バードと一緒に『ヒートウェイブ』に入ったが、 彼はまさに王様みたいに扱われていた。当たり前だ、バードだからな。 俺たちは肩を組んでいたから、俺もなかなかの扱いを受けた。その夜は演奏 しないで、ひたすら聞き耳を立てていた。アルト・サックスを手にした時のバードの 変わりようはなかった。落ちぶれてどうしようもなく見えたのに、 この世の美と力の全てが湧き出てくるんだ。バードは24歳だったが、オフステージ では老けて見えた。だが、楽器を口にした途端、すべてが変わってしまうんだ。 酒やクスリに酔っぱらってひっくり返りそうになっても、誰よりもすごい演奏をして しまうのがバードだ。バードに比べられるものは世界中どこを探してもなかった。 |
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